前回は、英語で2つの言葉を入れ替えるだけで、意味がまるごとひっくり返ることを見ました。
では、日本語と同じノリで、もっと自由に語順を混ぜてみたらどうなるでしょう?
実はこれ、「意味が変わる」くらいでは済みません。英語は、順番を崩した瞬間に「文」ですらなくなります。
それくらい、英語は順番がすべての言語なんです。
日本語みたいに混ぜても、英語は通じる?|グラムとトビー、2回目のツッコミ
トビー前回は、犬と猫を入れ替えたら意味が逆転する、って話だったよね。



はい。The dog chased the cat. と The cat chased the dog. ですね。



ここで思考実験。日本語なんて「ボールを 男の子が 公園で 蹴った」みたいに、もっと自由に混ぜても通じるよね。



日本語は、そうですね。



では、英語もこの語順でいきましょう。The ball the boy kicked in the park.
グラビーム!!



そんなタワけたことを言っていると、地獄の業火でトビーが焼かれるわけですね。これ、ブログ100回記念でグラムと与太話してた時に出たグラミーロボでは?!



はい。MITと共同開発の。そのプロジェクト、グラムも参加してたんですよ。



さすがは森の賢者、フクロウ。子供でもIQ高いですね。でもそのロボ、危険ですからしまっておきましょう(笑)



話を逸らしちゃだめですよ。なぜグラビームのお仕置きが出たのか猛省してください。聞いた人は「公園で男の子が蹴ったボールが……で?」って、続きを待ってますよ。



……文が、終わってない?



意味が変わる以前に、文になってないんです。



じゃあ「蹴った」を先に出す。Kicked the boy the ball in the park.



247%悪化しました。



ストレートに刺してきますね。
……じゃあ、これは? In the park, the boy kicked the ball.



……それは、合ってます。



え、なんで!? 同じように動かしただけなのに。



それが今日の話です。英語には、動かしていいものと、動かしちゃいけないものがあるんです。
2要素の入れ替えで意味が逆転する話は、前回の1-aで詳しく扱っています。まだの方は、先にこちらからどうぞ。
▶︎てにをはマジック|英語は”語順”が命、日本語とのちがいを知る【グラムとえいご!1-a】
日本語は、どれだけ混ぜても通じる|名札つきの”かたまり”は自由に動ける
まずは、日本語で同じ実験をしてみましょう。
「公園で男の子がボールを蹴った」という文は、次の4つのかたまりでできています。
公園で / 男の子が / ボールを / 蹴った
このかたまりを、順番を変えて並べてみます。
・公園で 男の子が ボールを 蹴った。
・ボールを 男の子が 公園で 蹴った。
・男の子が 公園で ボールを 蹴った。
・蹴った、公園で ボールを 男の子が。
最後の文は少し芝居がかって聞こえますが、それでも「男の子が、公園で、ボールを蹴った」という内容はちゃんと伝わります。どの並べ方でも、誰が・どこで・何をしたのかは変わりません。
理由は、前回見たとおりです。それぞれのかたまりには「が」「を」「で」という名札(助詞)がついています。名札がかたまりと一緒に移動するので、どこに置いても役割がわかるんです。
ただし、この実験にはひとつルールがあります。動かしていいのは、かたまりごとだけです。
× で公園 男の子が ボールを 蹴った。
× 公園で が男の子 ボールを 蹴った。
名札を言葉から引きはがすと、日本語でもさすがに通じません。日本語が自由に動かせるのは、あくまで名札つきのかたまりです。
次の章では、このルールをそのまま英語に当てはめます。単語をバラバラにするのではなく、かたまりごと動かすだけです。条件をそろえても、英語は日本語のようにはいきません。


英語で同じ実験をすると…|かたまりごと動かしても、文が壊れる
では、同じ実験を英語でやってみます。ルールは日本語のときと同じで、かたまりごと動かすだけです。単語をバラバラにはしません。
「男の子が公園でボールを蹴った」は、英語では次のようになります。
The boy kicked the ball in the park.
これを、4つのかたまりに分けます。
The boy / kicked / the ball / in the park
ここで、日本語とのちがいに気づいたでしょうか。英語のかたまりには、「が」「を」にあたる名札がついていません。the boy を見ても、それが「蹴った側」なのか「蹴られた側」なのかは、言葉そのものからはわからないんです。
この4つを、日本語のときと同じように並べ替えてみます。
| 並べ方 | 結果 | どうなった? |
|---|---|---|
| The boy kicked the ball in the park. | ◯ 元の文 | 男の子が公園でボールを蹴った |
| The ball the boy kicked in the park. | × 壊れる | 文が終わらない(「で、そのボールがどうしたの?」) |
| Kicked the boy the ball in the park. | × 壊れる | 誰が蹴ったのか組み立てられない |
| The ball kicked the boy in the park. | △ 逆転 | ボールが男の子を蹴った(前回の型) |
| In the park, the boy kicked the ball. | ◯ 平気 | 元の文と同じ意味 |
日本語では、どう並べても意味は同じでした。英語では、結果が3つに分かれます。
① 壊れる
日本語の順番のまま並べた The ball the boy kicked in the park. は、「男の子が公園で蹴ったボール」で止まってしまいます。「で、そのボールがどうしたの?」と、文として完結しません。
② 意味が逆転する
The ball kicked the boy … は、文としては成立します。でも意味は「ボールが男の子を蹴った」。前回の犬と猫と同じパターンです。
③ なぜか平気
In the park だけは、先頭に動かしても意味が変わりません。この謎は、あとで取り上げます。
前回は「語順を変えると意味が変わる」でした。今回は、その一歩先です。名札のない英語は、語順を崩すと「文」ですらなくなる。
つまり、英語は順番がすべてなんです。


日本語の順番に並べ替えて英文を読むクセは、英語が得意になってからも「戻り読み」として残りがちです。その正体は、こちらで詳しく扱っています。
▶︎英語の戻り読みを減らす方法|英検1級ホルダーが原因を3つに分けて例文解説
壊れた文は、置き場に戻せば直る|英語には「決まった置き場」がある
壊れてしまった The ball the boy kicked in the park. を直す方法は、とてもシンプルです。
かたまりを、元の置き場に戻すだけ。
・The ball the boy kicked in the park.(×)
・The boy kicked the ball in the park.(◯)
単語は1つも変えていません。変えたのは置き場所だけです。それだけで、文は元どおり通じるようになります。
英語は、名札の代わりに「どこに置くか」で役割を決めています。先頭にあれば「する側」、そのすぐ後ろが「動き」、さらにその後ろが「される側」。置き場そのものが、日本語の名札の役目をしているんです。
前回、英文は5つの「箱」でできている、という話を少しだけしました。その箱には、それぞれ座る場所が決まっています。今回の文では、そのうち4つが並んでいます。
では、in the park だけが先頭に動けたのはなぜでしょう? これも、置き場のルールで説明がつきます。その正体は、次回いよいよ明かします。


「置き場」と「箱」の考え方は、トビーメソッドの土台そのものです。全体像はこちらにまとめています。
▶︎トビーメソッドとは?|SVOCM「箱」原則で読み解く精読メソッド
まとめ|ミニ練習問題
それでは、今回の章をまとめてみましょう。
・日本語は、かたまりごとになら語順を自由に混ぜても、名札のおかげで意味が保たれる
・英語は、かたまりごとに動かしても意味が保たれるとは限らない。日本語の順番のまま並べると、文として壊れてしまう
・英語は「どこに置くか」そのもので役割を決めている。だから、置き場に戻せば直る
英語がここまで語順にこだわる理由、少しつかめたでしょうか。
次回1-cでは、この「決まった置き場」の正体に、いよいよ迫っていきます。



では最後に、ミニ練習問題に行ってみましょう。
①並べ替えて意味を問う問題
次の単語を正しい語順に並べ替え、できた英文の意味を答えよ。
the / girl / read / a / book / in / the / room
答えを見る
The girl read a book in the room.(女の子は部屋で本を読んだ)②意味が変わるように語順を入れ替える問題
次の英文を、意味が変わるように語順を入れ替えよ。
The dog bit the cat.
答えを見る
The cat bit the dog.(猫が犬を噛んだ)③単語の並べ替え問題
次の単語を並べ替えて、「彼女は公園で歌った」という意味の英文を作れ。
in / the / park / she / sang
答えを見る
The girl read a book in the room.(女の子は部屋で本を読んだ)次回1-cでは、「動かしていい場所」の正体——英文を作っている5つの部品の姿に、いよいよ迫ります。10歳のグラムに、また何か切られる前にお楽しみに。
トビーメソッドの全体像を先に知りたい方は、こちらもどうぞ。
▶︎「英語が読めない」の正体、教えます|グラムとえいご!全18話の地図【入門編ガイダンス】
Tobey English!









