英文メール、1行書くのに30分。ニアリー四半世紀前の、ちっとも笑えない実話です。
Could you please advise the lead time for the following items?
……うん。間違いなく30分以上はかかったこの一文。
若かりし頃、海外営業部に配属になったころのトビーの実話です。
・Could youは、Would youでなくてもいいのか?
・Please adviseとコンパクトに書いた方がよいのか?
・そもそも、英語のスペルがキーボードでうまく打てない。
今は時代が変わりました。
気がついたら、会社の人、みんな書く英語が超A級。
ん? あの人は先日やっとTOEIC600点を超えたって言ってたではないか?
なぜゆえ、そのメールは英検1級(いちおう)のトビーよりはるかに洗練されているのか?
——だいたい、20年以上も海外業務の現場にいるとわかります。
「AIの普及と英文メールの洗練度には、ぜったい相関性がある」
という不都合な真実(笑)
ひそかに、というかほとんど公然と、みんなAIを使って英文メールを書いている。確かに便利。
でも待って。一方では「英語のスキル、最近全然あがらないんだよねー」なんて声も耳にする。
そんなAI時代だからこそ、改めて問いたい、英語×AIの功罪。
今回は、そんなところをトビーがぶった斬っていきたいと思います。
英語メールが劇的に進化した”AI時代”、その裏で起きていること
正直に言うと、便利なんです。ChatGPTに日本語で要点を投げれば、数秒でネイティブ並みの英文メールが返ってくる。かつて30分かけて悩んでいたあの一文も、今なら秒殺です(笑)
でも、20年以上この現場にいると、ちょっと違う景色も見えてきます。
AIで書く英文の質と、その人自身の英語力は、必ずしもイコールじゃない。むしろ
「AIに任せっぱなしの人ほど、実は英語力が伸びていない」
というケースを、何度も見てきました。
便利なツールが手に入ったのに、なぜかスキルは置いてけぼり。これ、実はビジネス英語×AIの世界で今まさに起きている”あるある”だったりします。
まずはこの現象、感覚論だけじゃなく、データでも確認してみましょう。
AIとの付き合い方については、こちらでも突っ込んで考えています
▶︎AI翻訳があれば英語はいらない?|TOEIC915・英検1級ホルダーが出した”2026年の答え”
データで見るビジネス英語×AI活用の実態
「感覚だけで語ってるんじゃないの?」と思われそうなので、ちゃんと数字も見てみましょう。
①「困っている」人は圧倒的多数
ある調査(2026年・一般社員300名/管理職300名対象)では、こんな結果が出ています。
・6割超が英語力不足で業務上困った経験あり
・一般社員の悩み1位:「話せない」
・管理職の悩み1位:「聞き取れない・伝えきれない」
・4技能の中で世代・役職共通の最苦手技能:スピーキング(4割前後)
・英語学習に割ける時間が「ほぼゼロ」と答えた人:約3割
役職が上がっても悩みは消えない。むしろ「聞き取れない・伝えきれない」という、より切実な悩みに変わっていくのが興味深いところです。
企業が求める力と、社員の実力にはギャップがある
別の調査(日経ビジネスオンライン登録者対象)では、こんな構図が見えてきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業が求める英語力 | 英語の会議(テレカン含む)で議論できるレベル |
| 社員の実際のスキル最多回答 | 「挨拶ができる」「メールのやり取りができる」 |
| 課題として最多の回答 | 「仕事で英語を使う機会が少ない」(5割超) |
つまり、会議で戦えるレベルを求められているのに、実際にできているのはメールと挨拶止まり、というギャップがずっと埋まっていないわけです。
そこに登場したのが「AI」
このギャップを埋める救世主として急速に普及したのが、生成AIです。
・海外会議を自動で文字起こし・要約するAI議事録ツールが2026年に入り急増
・日本語で要点を伝えるだけで英訳してくれるAI英文メール作成サービスも一般化
・「聞き取れなくてもAIが拾ってくれる」「書けなくてもAIが訳してくれる」時代に
便利になった。でも、それは自分の英語力が上がったこととイコールではない。
このズレこそが、今回のテーマの核心です。
AIがこれだけ発達しても、みなさんの英語の悩みは変わらないのが象徴的ですね。
そもそもビジネス英語に必要なレベル感については、こちらで詳しく解説しています
▶︎ビジネスで使える英語はどのレベル?|迷走歴25年のトビーがたどり着いた現実解
職場のリアル:AIにメールを任せっぱなしで、ライティング力が伸びない人たち
実際、職場でよく聞く話があります。
「英文メール? もうAIなしには戻れない」
実際、そうなんです。業務は回るし、相手にも問題なく伝わる。
おまけに、下手な英語書いて恥ずかしい思いもしなくていい(笑)
でも、それを何年も続けている人の英語力を見てみると……あれ、去年と変わってない。むしろ、TOEICのスコアも伸び悩んでいたりする。
これ、他人事じゃなくて自分も一瞬ヒヤッとした経験があります。AIが訳してくれた英文をそのままコピペして送る。文面はきれいなプロ仕様。でも自分では一つも英語を”作って”いない。慣れてくると、だんだん「なぜその表現なのか」を考えなくなるんですよね。
そして、あとになって大体の人が抱えるジレンマ。
自分の英語、なんだかこのところ伸びてないみたい。
当たり前と言えば当たり前かもしれません。
英語力というのは、悩んで、間違えて、直して、初めて身につくものです。AIがその「悩む」工程をまるごと肩代わりしてくれるので、便利さと引き換えに、成長の機会そのものが消えてしまう。
これは英文メールに限った話ではありません。実は「話す」「聞き取る」の分野でも、似たようなことが起きています。
アウトプットとの向き合い方については、こちらの記事も参考にしてください
▶︎英語日記、書かなくてもTOEIC915・英検1級は取れた|トビーが正直に語る”アウトプットの代替戦略”
AIで鍛えても「話す」「聞き取る」はなかなか伸びない、という事実
ここでちょっと、トビーの中国語の話を。
トビーはいちおう、中国語試験のHSK6級を一回受験で取得しました。
でもその前に、来る日も来る日もネイティブと話し、聞き続けました。留学時代は友人たちと喋り倒し、聞き取れなければ聞き返す。社会人になってからも、中国ビジネスの現場で電話会議や商談を通じて、膨大な”生の中国語”を浴び続けてきました。
「話す」「聞き取る」の力だけは、机の上ではどうにもならない。
というのが、経験を通じての正直なところです。
文法を理解しても、相手のテンポで瞬時に反応する筋肉はまた別物。とにかく場数を踏むしかなかった、というのが実感です。
AIとの音声練習は便利ですが、相手は疲れず、待ってくれて、こちらのペースに合わせてくれます。でも実際の商談や会議の相手は生身の人間。間もテンポも予測不可能です。
だとしたら、AIを使うべき場所は他にあります。次はそこに踏み込んでいきます。



三カ国語話者になりたいと思っている方。沼るのであまりトビーはおすすめしません。その分を思いっきり英語に割り振った方が、ビジネスでは正直強いですね。
語学の向き不向きについては、中国語も含めてこちらで解説しています
▶︎語学が”向いてる人・向いてない人”の違いとは?|英検1級&HSK6級トリリンガルが徹底解説
AI活用の真骨頂はリーディングにある|トビーが精読で使い倒している方法
ここまで「AIに任せると伸びない」話ばかりしてきましたが、誤解しないでください。トビーはAI否定派どころか、ほぼ毎日AIを使っています。ただし、目的を仕事の効率化と英語力の向上に使い分けています。
トビーが毎日AIに投げているのは、こんな質問です。
・この構文、SVOCどう分解する?
・この単語、辞書の意味だとしっくりこないんだけど、ここでのニュアンスは?
・なぜここでこの前置詞が使われている?
・この一文、直訳と意訳、どっちがこの文脈に近い?
CNN記事も、最近は英検1級の過去問も、この使い方で精読しています。AIは「答えを渡してくれる存在」ではなく、「なぜ?と何度聞いても嫌な顔をしない、超優秀な家庭教師」として使う。ここが一番の分かれ道です。
メール作成とリーディングの違いは、「AIが最終アウトプットを作るか」「AIが理解の補助をするか」です。前者は思考を代行され、後者は思考が深まる。同じAIでも、使う場所によって効果は正反対になります。
実際のAI活用プロンプトはこちらで公開しています
▶︎AIでCNNを精読する方法|TOEIC915点・英検1級ホルダーが教えるClaude活用プロンプト公開
ノンネイティブの英語の基本はリーディング|「読めないものは聞き取れない」
英語と中国語、2つの外国語を学んできて、トビーがたどり着いた結論はシンプルです。
ノンネイティブの語学学習は、リーディングが土台になる。
理由は単純で、知らない単語・構造は、そもそも耳に入ってきても脳が処理できないからです。文字で見て意味が分かって初めて、音として聞こえたときにも「あ、あれだ」と認識できる。読めない単語は、どれだけ耳を鍛えても聞き取れません。
中国語を学んでいたときも同じでした。知らない単語は、何度聞いても雑音にしか聞こえない。でも、一度文字と意味を理解した単語は、次に耳にしたとき驚くほどクリアに聞こえてくる。この体験は英語でも中国語でも変わりませんでした。
リーディングで語彙・構文の土台を作ると、そこから他の技能への波及が起きます。
・読める→知っている単語・構造が増える→聞き取れる
・読める→正しい表現のストックが増える→書ける
・読める→とっさに使える表現が増える→話せる
つまり、リーディング(=精読)は他の3技能の土台であり、遠回りに見えて実は一番の近道なんです。
では、ここまでを図解にまとめておきましょう。


このロジックはリスニングの弱点分析でも同じ結論に達しています
▶︎TOEICリスニングが伸びない本当の理由|”読めない英語は聞き取れない”精聴メソッド
まとめ:AIはメール代行係じゃない、精読の相棒!


というわけで、今回の結論はシンプルです
| AIの使い方 | 何が起きるか |
|---|---|
| メールを丸投げ | 仕事は回るが、働いているのはAIの英語力。自分の力は伸びない |
| 精読の相棒にする | 分からない構文・単語をその場で解消しながら、自分の力になる |
メールの丸投げが悪いわけではありません。業務効率化として考えれば、これもアリ。
でも、せっかくのAIを英語力向上に役立てないのはもったいない!
ClaudeでもChatGPTでもいい。精読の相棒として有効活用し、更なる高みを目指しましょう。
精読ツールとしてのAI選びに迷ったら、こちらの比較もどうぞ
▶︎ChatGPTとClaude、精読にはどっちが向いてる?|英検1級ホルダーが徹底比較
Tobey English!






