その「速読法」…騙されてない?20年迷走した私が辿り着いた結論

TOEIC

語学学習者がみんな憧れる(?)「速読」とは?

「速読」「英語」で検索すると多くのサイトが出てきます。それだけ英語学習者にとって速読は憧れであり、誰もが身につけたいスキルなのだと思います。でもそもそも「速読ができる」とはどういうことでしょうか? 英語学習者には漠然と「速読ができるとすごい」みたいなイメージを持つ方も多いかと思います。実際にトビーもそうでした。

ここでは語学学習迷走歴20年以上のトビーが、実体験をもとに速読力の正体とその重要性について掘り下げて考えてみたいと思います。

そもそも、なぜ英語学習者は速読に憧れるのでしょうか?TOEICや英検などの試験ではとにかく時間との戦いが続きますし、「もっと速く読めれば問題が全部解けるのに…」と思ったことがある人も多いはず。また、ネイティブのようにスラスラ読める自分を想像するのは、英語学習のモチベーションにもなりますよね。BBCやCNNといった英文サイト、スラスラよめたらカッコ良くないですか?

この記事を書いた人

トビー
語学学習迷走歴20年上にして、英語学習の徹底的なやり直しを決意。出だしでいきなり挫折するも、あることがきっかけでたった1回の受験でTOEIC900点越え→4ヶ月で英検1級取得→3週間でHSK6級取得

<語学試験>
・TOEIC:915(初回受験で目標の900点越え達成)
・英検:1級(初回受験で目標達成)
・HSK:6級(初回受験でスコア232 。勉強期間3週間

<職業>
・職業:精密機器セールスエンジニア
・英語・中国語 ビジネスでの使用歴20年以上
・語学学習迷走歴20年以上(笑)

トビーが経験した「速読の壁」

トビーもTOEIC900点を目指していた頃、「速読の壁」にぶつかりました。公式問題集を何度繰り返しても、リーディングパートが時間内に終わらないのです。焦って読むと内容が頭に入らず、何度も読み返して時間切れという悪循環でした。

当時、毎日朝4時半に起きて平日で4時間以上、休日は8時間ほど勉強していました。それでもTOEIC900点には程遠く、15問ほど解き残す状態が続きました。努力に結果が伴わず、TOEICの勉強がトラウマになるほどの挫折を経験しました。しまいには公式問題集を開くのも苦痛に感じるほどに(笑)。

この時期は特に「自分だけが伸びていないのでは?」と焦る日々でした。SNSで他の学習者が高得点を報告しているのを見るたびに、劣等感に苛まれていたのを覚えています。

「速読法」の教材に踊らされた日々

そこで「どうすれば速読力が身につくのか?」とネットやYouTubeで徹底的に調べました。あるTOEIC系YouTuberが勧める『速読英単語』も試しましたが、半分ほど進めてもしっくりきませんでした。それでは「速読力」ではなく「長文読解力」なのかと思い、次々と教材を試しましたが結局これと言った効果は得られず勉強は行き詰まりに。

「10倍速で読める!」「1週間で読解革命!」などのキャッチーなフレーズについ惹かれてしまい、いくつもの教材に手を出しました。でも、どれも一時的に満足感は得られるものの、現実的な成果にはつながらず、徒労感だけが残りました。

最終的に、TOEIC「すみれ塾」を主宰されている中村先生と、西きょうじ先生著 『ポレポレ英文読解プロセス50』に出会い、長きにわたる迷走がついに終了。この選択が正しく、半年後にTOEIC初回受験で900点超え、その4か月後には英検1級取得、ノリに乗って更に3週間後には中国語の検定HSK6級にも合格しました。

「速読」は存在しない!?定義の曖昧さ

「速読」という言葉が独り歩きしているようですが、そもそも、「速読」の定義自体が非常に曖昧です。ひとまずTOEIC900点、英検1級に必要とされる1分間当たりの語数(WPM:Words Per Minute)をまとめてみました。

試験必要な読解速度(WPM)読解対象の文章量(目安)
英検1級150〜200語/分約1,800語(リーディング35分間)
TOEIC900点以上130〜160語/分約2,000語以上(Part7全体)

WPMとは「Words Per Minute」の略で、「1分間に読める英単語数」を示します。日本語のように「文字数」で計る文化とは少し異なりますね。試験で求められる読解速度を考えると、ある程度の速さは確かに必要ですが、それだけでは不十分です。

実際にはここには表れてこない「試験そのものの違い」があります。英検では正確な読解力が前提。ニュース・学術レベルの英文を読めることが求められます。一方、TOEICは英検1級と比較して文章そのものの難易度は低いものの、スキミングスキャニングといったテクニックや情報を素早く取捨選択する力がカギとなります。

また、「読めている」ことと「理解している」ことは別問題です。読み手の理解力や背景知識で理解度は変わりますから、誰にでも即効性のある速読法なんて存在しないのです。

それでも速読関連教材が市場に溢れるのは、それがビジネスとして成立するからだと思います。キャッチーな「速読メソッド」が売れるのは、みんなが時間に追われているから。これって、英語学習の闇…ですよね。

「速読 vs 精読」は科学的にも決着していた

実は「速読だけで英語が読めるようになるのか?」という疑問は、英語教育や認知心理学の世界でも長年議論されてきました。ここでは、その一部を紹介したいと思います。

認知心理学が示す「速読」の限界

アメリカの教育心理学者、キース・レイナー博士(Keith Rayner)は、速読法について次のように述べています。

「読むスピードと理解度はトレードオフ(相反関係)であり、読む速度を一定以上に上げると内容理解は急激に低下する」
(Rayner, K. “The speed-reading myth”, Psychological Science in the Public Interest, 2016)

これは人間の脳の仕組みによるもの。英語のリーディングは目の動き(視線移動)だけでなく、文法的処理・語彙処理・背景知識(スキーマ)の総合力が求められるからです。読む速度を無理に上げると、処理が追いつかずに理解が落ちる。至極当然の話ですね。

本番テストで時間を気にして焦って、リーディングパートを読んでも「英文の上で目が滑ってしまう」経験ありませんか? あれです、あれ(笑)

第二言語学習(L2習得)研究の見解

さらに、英語を母語としない学習者(L2学習者)の場合、基礎となる「精読力(構文読解力)」の習得は避けて通れないとする研究が多数存在します。代表的なのは「多読 vs 精読」の議論。
英語教育の研究者ポール・ネイション氏(Paul Nation)はこう述べています。

「大量に読む(多読)ことで語彙や表現への慣れが身につく。しかし、その前提は『正確に読める力=精読力』が備わっていることだ」

全ての語学学習者に捧げたい言葉(涙)。つまり、多読は「精読で鍛えた英語力を実戦で活用するフェーズ」。まだ文法知識や構文理解が曖昧な段階で無理に多読をしても、間違った理解のまま読書量だけが積み上がってしまうってことですね。

これ…まさに、私(トビー)が20年迷走した原因そのもの(笑)

科学的に見ても結論はこう

  • 英語リーディングは「精読(構文理解)」→「多読(量と慣れ)」の順番が最適
  • 速読法はあくまで補助的なスキルであって万能ではない
  • 結局、一番の近道は地道な精読力の強化

やっぱり語学学習に「楽して一発逆転」は無いんですね…ってことに行き着いてしまいました。

本当の速読力=精読力+慣れ

では、どうすれば速く正確に読めるようになるのでしょうか?20年以上にわたり語学学習を迷走したトビーがたどり着いた結論は、「精読力(構文読解力)」の習得でした。

中村先生が主催するTOEICすみれ塾では、構文読解セミナーを受講することができ、その中で山崎先生が同様のことを指摘されています。英文を速く読むコツは「I have a pen.」のように、瞬間的に理解できる英文を増やすことです。読めない英文を徹底的に精読し、何度も繰り返して「宝物」を増やしていくのです。実際、理解しにくい英文のパターンは無限ではなく、有限の数に限られています。

『ポレポレ英文読解プロセス50』はそれを50のステップで解説しています。構文の型を1つずつ理解し、繰り返し読み込むことで、文構造に対する感覚が養われていきます。地道に続けると、ちゃんとした「精読力」がつき、気づかないうちに英文を読むスピードは上がります。

急がば回れ!ですよ。

精読の壁を早く越えよう!

精読を始めると、一時的に読む速度が落ちるかもしれません。しかし、継続することで自然と読むスピードは上がります。トビーはこれを「精読の壁」と呼んでいますが、この壁を早く越えることが、英語力を飛躍的に伸ばす鍵です。逆に、精読を曖昧にすると中級レベルで停滞します。英文を間違ったまま解釈しているため、いくら読んでも進歩がないのです。

精読習得のステップだけは絶対にショートカットしてはいけません。冒頭でTOEIC900点を目指して勉強中速読ができずに挫折が陥ったのはまさにここです。これまで20年間以上英語を使ってきて、一度も「精読」練習をしたことがありませんでした。もっと正確に言うと英語学習に「精読・構文読解」というジャンルがあることすら知りませんでした

TOEIC900点越えや英検1級を英語学習の最終目標としたとき、そこには明確な階層構造があります。「単語→基礎文法→精読・構文読解」。ここは詳しくは別の記事を見ていただければと思います。単語や基礎文法はきちっとやられる方が多いのですが、「精読・構文読解」は曖昧にされている方、結構多いのではないでしょうか?早く「精読の壁」を超えて目標を達成してしまいましょう!

最後に

トビー自身、このシンプルな真実に気づくまで20年以上かかりました。これを読んでいる方には、ぜひ最短ルートで精読の壁を突破してほしいと思います。そのために役立つ情報をこれから丁寧に発信していきます。

まずは、過去に読んだ教材の中から「読めなかった英文」を1つだけ選んで、それを徹底的に精読してみることから始めてみてください。そこがスタートラインです!

まとめ

  1. 安易な「速読法」は存在しない!
  2. 重要なのは精読・構文読解の習得
  3. 精読できるから正しく速く読める!
  4. 読の壁は1日でも早く越えよう!

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